「タクティクスオウガ リボーン」レビュー

ガルガスタン、バクラム、ウォルスタという3つの民族が暮らすヴァレリア諸島内でおきる民族紛争。主人公である、少数派のウォルスタ人の青年デニムが、民族同士が争わず平和に暮らせる世界を目指して仲間と立ち上がる物語。

タクティカルRPGの金字塔として名高い本作。オリジナル版もリメイク版もプレイする機会がなかったものの、ずっと気になっていたので、このタイミングでプレイしてみることにした。

プレイ開始から約2ヶ月を経てようやくクリアに至った。非常に考えさせられる内容で、夢中でプレイしていので前半はネタバレなし、後半はネタバレありという構成でレビューしていく。

レビュアーの状況と環境

  • 過去作は未プレイ。完全に初見プレイ。
  • Steam版をPCとSteamDeckでプレイ。
  • 攻略情報は極力見ない。
  • 損得は考えずに自分の思うがままに選択。
  • とりあえず、エンディングを迎えた時点の感想。
  • SRPGは過去に、フロントミッションシリーズ、ファイアーエムブレムを数本、そしてFFタクティクスを続編含めてプレイ済み。

物語を選択できる面白さ

主人公デニムは、様々な場面でその後に影響する選択を迫られることになる。普段平和に暮らしていると、出会えない民族紛争時下のリーダーとしての重たい選択肢は、思わず考え込んでしまうほどだった。そしてその選択によって分岐するストーリーが用意されているのが、このゲーム最大の面白さだろう。個人の倫理観を優先するのか、勢力全体や島全体の将来を見据えるのか。主人公とともに思い悩むため非常に感情移入がしやすい。

また感情移入に一役買っているのが、自分たちの足跡が世界でどのように受け止められいるかがわかるレポートの存在だ。いわゆる新聞みたいなもので、自分たちの行動がどのように見られているのかを知ることができる。RPGではどうしても主人公=正義が成り立ちやすいので、外からどうみられてるは、あまり気にすることはない。(というか情報としてセットされてないことも多い)外からの視点があると、自分=正義という図式を簡単に狂わせることができ、プレイヤーの選択に迷いが生じて面白い。

ほどよい難易度とボリュームのあるバトル

ゲームのメインであるバトルについても、リメイクということもあり、遊びやすくチューニングされていた(ように思う)。相手の行動順や移動範囲、特性など様々なことを同時並行で考えながら自軍のキャラを操作していくので、気付くと夢中でプレイしてしまう。次の1手を熟考することもできるので、FPSやバトルロワイヤル系など昨今のゲームスピードについていけない人も、安心してのめりこめる。気付くと1時間が経過していたということも珍しくなかった。

クァドリガ砦
序盤で大苦戦を強いられたクァドリガ砦

難易度設定も絶妙だった。

レベルキャップ(ストーリー進行上のレベル上限)が設定されているので、いわゆるレベリングして敵を圧倒していくという戦術が取れない。そのため進め方に問題はないか。現状のリソースで勝ち切れるのか。見落としている仕様はないか。など様々なことを考える必要がでてくる。当然1発でクリアできないステージがいくつもあり、ゲームオーバーにイライラすることもなくはなかった。そのたびにちゃんと頭を使ってね。と制作者の松野さんに言われている気がした。そして、問題点を特定し対応すると、ちゃんとクリアできるようになっている。(それでもボスが強すぎてこれ無理だろーって思ったステージがいくつかあったけど…)

おすすめできる人

  • RPGが好きでFFなどのストーリーや世界設定に目がない人
  • じっくり考えながら進めたい人
  • 失敗から学びながら根気よくプレイできる人

※以下はストーリーの内容にふれるためネタバレ含む

結局どのストーリーを辿ったのか

ここからは、プレイ済みの人やプレイ予定がない人向けに、もう少し踏み込んだレビューをしていく。まず、私が辿ったルートは以下。

いわゆるカオスルート

攻略サイトを見てみると、いわゆるカオスルートを爆進していた。自分の倫理観にしたがって、身内を大量虐殺なんてできるか!と大本営の戦略に迷わず異を唱える判断をしたら大変なことになってしまった。

1章終盤のバルマムッサの街で、味方の民間人の殺害を依頼され、「…馬鹿なことはやめるんだ!」を選択。

2章終盤、アルモリカ城で、レオナールにまだ間に合うからこちら側につけと言われて、「それは絶対にできない」を選択。

バルマムッサの街の選択肢は、多くの人が味方を殺さないという選択をしたのではないかと思いたい。結果、先々でも権力に迎合する選択肢がでてきたが、最初に啖呵を切った手前最後まで、この時の選択肢が起点になっていった感覚がある。故に2章終盤で、レオナールの問いかけにも応じなかった。

その結果、親友だったはずのヴァイスは主人公を裏切り、挙げ句処刑されてしまった。最愛の姉にも逃げられ、最後は自死。(ヴァイスはちょっと人格変わりすぎだと思った)争いのない世の中を作るという理想だけで、目の前に立ちふさがる敵勢力の粛清を繰り返して走りきった物語の最後は、「ゴリアテの虐殺王」なるただならぬ称号を頂戴し、悲運を回想しながら、テロリストの凶弾に倒れるというなんとも辛いエンディングだった。

カリスマ革命家のデニム亡きあとは再び戦乱が訪れてしまうのであろう未来が予見され、これは、恐ろしい終わらせ方だなと思った。だた自分の信念だけを拠り所にしていくと、敵味方双方にとって最善の結果にはならないよ。というメッセージはとてもリアリティがあった。

自分の理想のために、前に立ちはだかった人々をことごとく力でねじ伏せてきた訳で、ある意味当然の終わり方な気もした。つまり、裏を返せば理想を実現するためには、ある程度権力に迎合する柔軟性も必要ということだななど色々考えさせてくれる。

ゲームとしてこれらの選択肢やストーリー展開は非常に優れており、考えさせられる内容になっている。

ゲームとしてはどうだったのか。

先に述べたようにストーリーについては、選択により未来が変化するため感情移入もしやすく非常にクオリティが高い。ただ、時々やや強引な展開もあり、説明が足りない場面も散見された。(そういうことだと理解すれば大きな問題ではない程度)

またゲームとしては、さすがに2023年に遊ぶと全体的にやや単調で古さは否めない。個人的には、世界設定や物語の面白さが上回り、時間を忘れてプレイすることができた。中盤以降相手ボスの必殺技1発で殺されたり、やたらと硬い敵だらけに理不尽さは感じたものの、工夫次第で対応でき、遊びごたえのある難易度だった。

例にあげると、将校クラスが2体同時出現するフィダック城は難しすぎたし、ラストダンジョンである、空中庭園は長すぎた。ラスボスは状態以上の連続で強すぎて、子供は投げ出すレベルだったと思う。(味方死傷者0はここで潰えた)

オリジナルをプレイ済みのプレイヤーからは非難の的になっていたバフカードやレベルシンクなども初見プレイの身としては全く気にならなかった。とにかくレベルを上げ、圧倒的な能力で相手を制していくことができない分、どう戦うかに頭をひねらせることができたように思う。

今再びリメイクしてくれたことに感謝を

SRPGの名作として名高い本作を、なぜ今までプレイしていなかったのか。振り返ってみると、オリジナルの発売のタイミングは、聖剣伝説3をプレイしていたようだった。FFやドラクエを中心に遊んでいたあの頃、優先順位は、ロマサガや聖剣などのナンバリングタイトルの方にあったと思われる。当時のSFCのソフトは1万円以上する高級品で、新規タイトルの優先順位は高くできなかった。そうこうしているうちに、SFCの時代は終わってしまい、プレイの機会を逸してしまったので大人になった今、思い出補正のない状態で、このゲームをプレイできてよかった。

名作と言われる確かなクオリティのゲームだったと感じる。

ノートPCで新幹線内でもプレイ