ドラゴンクエスト様式美の完成形。ドラゴンクエストXIレビュー

その昔、ドッドが描く山や海の世界をこれまたドッドで描かれた主人公キャラを操り、ドットで描かれたモンスターを倒して世界を救った。

当時の私にはそれでも大冒険だったし青春の1ページとしての大切な思い出となっている。

でも実際にモンスターはどのように世界にはびこり、どんな生態なのか。呪文はどのような規模で展開されているのか。船はどのように停泊しているのか。といった様々な世界を構成する情報を想像力とドラゴンクエスト4コマ劇場で補完するしかなかった。

想像したり創作物を読み漁ることも含めてドラクエの楽しさだったことは間違いないが、PS4になったドラクエXIは、この補完していった情報に公式見解と彩りを加え、ドラクエの世界とはこういう世界だったのだよ。を教えてくれた。

※以下クリア後のレビューです。具体的なストーリーに関するネタバレは極力触れていませんが、何も知りたくない方はご注意ください。

どこかで見たことのある、生命を感じる美しいフィールドの数々。
動きや仕草に愛嬌たっぷりのモンスター

明らかになった世界は、想像の何倍も色鮮やかで魅力的な世界だった。

ドラクエファンとして、それだけで嬉しかったし、新しい世界を冒険するのが楽しかった。勇者となって世界を救うというストーリーもオーソドックスながら引き込まれる内容だった。みなどこかに弱さを抱えており、その弱さを仲間と一緒に克服していく。いささか教育的すぎる内容にも感じたけれど、子供にも安心して遊ばせることができる。

個人的には終盤のストーリーに議論の余地を残したのも面白いと感じた、詳細は割愛するが、この展開を生理的に受け付けない人や、もやっとする人もいるだろうけれど、なんなら、そこで終わってもよいのだよ。という制作者側からのメッセージだった気もする。

レベルデザインも非常にバランスが取れていた。序盤中盤は、フィールドの敵とそれなりに戦っていると、サクサクレベルがあがり、いわゆるレベル上げが殆ど必要なく、ストーリーに集中できる。終盤は流石に、パーティを強化しないと勝てない強さの敵が登場するため、レベリングや装備強化が必要になる。

しかし決戦に向けてパワーアップしなければ。というムードの中で行われるため、作業感は薄い。加えて、成長のシステムもスキルパネルというわかりやすくシンプルな要素と、レベルアップのテンポの良さで、レベリングがむしろ楽しいと感じた。スキルパネルは、どんどん開放していきたくなるし、人によって育て方に違いが出るのも面白い。プレイヤーがどのようにレベリングを行う必要があるか、楽しさを含めて丁寧に設計されていた印象を受けた。

しゃべらない主人公や会話の音、変わらない戦闘システムに、魅力溢れるキャラクターたち。子供にはわかりやすく、大人、特に過去のドラクエを夢中で遊んだ世代には、懐かしさがこみ上げてくる。

ドラゴンクエストがドラゴンクエストとして、年月を重ねてきたからこそできる様式美の完成形を見た気がする。まさに国民的RPG。

過去にプレイしたタイトルは、その時間の経過とともに、思い出補正がかかり、当時よりも何倍も面白かったと感じるものだと思うけれど、今作はその思い出補正を差し引いても、過去ドラクエの中で最高傑作の部類に入るんではなかろうか。過去作を遊んできたことのある人だけにわかるラストなど、制作者に感謝したい。