傑作か問題作か。サイバーパンク2077レビュー

再三の発売延期を経て、ようやく発売されたサイバーパンク2077。多くのファンの期待を集めながらも、残念ながら数々の致命的なバグが残っており、家庭用コンソールでの販売が停止されてしまった。PC版(Steam版)で購入し、一通りエンディングまでプレイしたのでレビューしていく。(パッチ1.1)

プレイ開始当初は独特な世界観とこの手のゲーム特有の操作の難しさで、なかなかのめりこむことができず、別のゲームを遊ぶ傍ら少しずつメインストーリーを進めていた。完全に個人のスキルの問題だが、コントローラーでプレイするとエイムがうまくきかず、キーボード+マウスでは移動を含めた基本操作が怪しい。

それでもプレイしていくと、刀やナイフといった近距離武器であればエイムがいらないことに気付いた。近距離武器を握りしめて突進するスタイルを確立してからは、時間を忘れて夢中でプレイするようになり、気付けばプレイ時間は80時間を超えた。

狂気的な熱量で作り込まれた世界

まず第一に、建物や人など目に見える世界のクリエイティブのコンセプトが見事に統一されていた。多くの人が関わっての作品でこれだけ統一させて作り上げるのは容易ではなかっただろうと想像する。

▲人の数もかなり多い

加えて、膨大な数のアイテムや、テキスト情報がつまったチップが登場する。街なかのデジタルサイネージからはストーリーを補足する音声が流れ、テンポよく遊ぶにはいさかか頭がおかしいと思えるレベルだった。この膨大な情報量によってナイトシティやその外側の世界が補完される。メインストーリーだけおっていると、おそらく全体の1/3程度しか把握できない気がした。

何者にもなれる選択肢と良質なストーリー

パンクというテーマから、ナイトシティで見境なく暴れまわるのが基本スタンスかと思ってプレイしていたが、実に人間味のある話だった。特にキアヌ・リーブス演じるジョニー・シルバーハンドが登場したあたりから、物語の解像度が上がっていった。

進行中に表示される無数の選択肢によって、単なる物語の追体験から、自分だけの物語になっていく。選択によって聖人君主にも極悪非道な犯罪者にもなれる面白さはゲームならではの醍醐味だった。加えて成長のための選択肢(詳しくは後述)が非常に多岐に渡るため、人によって全く異なる性能の主人公に育つ。この点も自分だけの物語を加速させる要素だ。

FPS+RPG+オープンワールド。世界と日本を強く意識したゲームデザイン

「FPSRPGオープンワールドで遊ぶゲーム」。

ある程度ゲームのプレイ経験がある人に、サイバーパンク2077とはどんなゲームか?と聞かれたら、この一行で言い表すことができる。そしてこの3つの要素は非常に緻密にデザインされている。

まずFPS(ファーストパーソンシューティング)は、日本以外で市民権を得ているので世界の人にとって馴染みの深いゲームシステムだろう。(もちろん最近の日本人は当たり前にFPSを遊ぶようになったけれども)一方で、ドラクエやFFに代表される良質なRPGがゲーム市場を牽引してきた日本人に対しては、RPG要素(成長や武器防具による強化)が利いている。

敵を倒し、お金と経験値をもらい、新しい装備を手に入れて攻守のパラメーターを上げていく。さらにスキルマップからポイントを使っての能力開放。日本ではお馴染みの成長システムがあるおかげで海外製のゲームのプレイ経験がなくても対応しやすい。

ストーリーや街なかのローカライズを含め、北米や欧州をメインターゲットにしながらも日本に対しても力を入れて開発された意図を感じる。

実際に私もFPSの操作は得意ではない。コントローラーでのエイムには苦手意識があるし、キーボードのWASD移動も不慣れである。それでも遊んでいるうちに、銃で遠距離から狙うよりも間合いを詰めて殴る or 切るというのが楽であることを発見。結局ラスボスも金属バットでタコ殴りにした。

プレイヤーにどのようなゲームのプレイ体験があるのか。そしてどのプレイ体験からサイバーパンク2077の世界に入ってきているのか。得手不得手まで、様々なパターンで考慮された非常に優れたゲームデザインだった。

甲乙つけがたい点と問題点

両手を上げて傑作だったと褒めちぎってレビューを締めたかったが、なんともいえない違和感を感じたポイントも上げておく。

一人称視点

ゲームのプレイを開始するとまずはキャラクターを自由に作ることができる。かなり自由に作れるので、頑張って自分の分身となるキャラクターを作ってナイトシティに飛び込むのだが、そこに自分の姿はない。鏡の前や撮影モードの時しか自分の姿を確認できないので、感情移入がしにくかった。

▲鏡の前に来ると自分の姿を確認できる

ただこれはもうサイバーパンク2077を楽しむ上では、仕様として諦めるしかないポイントでプレイしているうちに気にならなくなった。(でもバイク乗車で三人称視点ができるなら人の場合も三人称視点を入れてほしかった)

Steam版は規制なし?性器モザイクなし、首も四肢も飛ぶ

PC版でプレイしたので、ある程度の成人指定表現があることは想定していた。ただ前述のキャラクリで性器の有無や大きさが選択できるのは驚いた。モザイクなしもできるんだなぁと関心してしまった。(海外では当たり前なのかもしれないけれど)

さらに刃物で攻撃すると簡単に人の首や四肢を切り落とせる。善悪の区別がつく成人には問題ないけれど。普段規制されているゲームしか遊んでいないので、最初は驚いた。

規制は本来の製作者の意図を改変してしまうので、ない状態でちゃんと遊ぶことができたのは個人的には非常に嬉しい。一方で、残酷な表現や性描写に抵抗がある場合、しっかりバグが潰れた状態になってからコンソール版でのプレイをオススメしたい。

誰も得をしないユーザーの煽動

はじめて本作のトレーラーを見た時、本当にPS4で動くのか?とそのクオリティの高さに目を疑うレベルで興味をそそられた。しかし蓋を開けてみると、クオリティアップを理由に度々発売が延期されたにも関わらず、PS4のグラフィックは開発中の絵とは似ても非なるものだった。

改めて動画で比較してしまうと、最低PS4 Proの環境は必要だったと思われる。なんなら先行してPC版だけ発売し、コンソール版はPS5まで発売を待てばよかったとも思える。PS4版は致命的なバグ対応を含めたパッチ適用が済んでから、PS4最適化版として的な別タイトル扱いで出すとか。やりようは無数にあったはず。PC版の画質を期待してPS4版を起動した人の落胆は考えるだけで辛い。

エンターテインメントを提供する目的で頑張っていたはずなのに、何故誰も得をしないプロモーションで煽動してしまったのか。様々なステークホルダーが関わった開発のどこかのタイミングで判断を誤ったのか。PS4版のQAをまともにやっていないとは思わないけれど現在のこの状況は一人のゲームファンとして悲しい。

PC版で遊ぶ分には、バグだらけの問題作として捨て置くのはもったいない意欲作だっただけに、非常に残念だ。今後のパッチアップデートでの安定したプレイ環境をこの世界に強く共感した一人のファンとして切に願う。

サイバーパンク2077 — クオリティに関する取り組み
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